表1 食用きのこ子実体の熱水抽出物の抗腫瘍作用
きのこ名 | 完全退宿率 | 腫瘍重量(g) | 阻止率(%) |
シ イ タ ケ | 6/10 | 2.2 | 80.7 |
対 照 | 0/10 | 11.4 | |
エノキタケ | 3/10 | 2.1 | 81.1 |
対 照 | 0/10 | 11.4 | |
ヒ ラ タ ケ | 5/10 | 2.3 | 75.3 |
対 照 | 0/10 | 9.4 | |
ナ メ コ | 3/10 | 1.4 | 86.5 |
対 照 | 0/10 | 10.4 | |
マ ツ タ ケ | 5/9 | 0.76 | 91.8 |
対 照 | 0/9 | 9.3 |
腫瘍:Sarcoma180(肉腫)
投与:腹腔内注射 200mg/kg/日 10日間
動物:スイス アルビノ・マウス
①熱水抽出物を注射した動物実験
Sarcoma180(腫瘍)をマウスに移植し、その翌日から10日間、熱水抽出物を腹腔内に注射し、がん移植後5週間目にがんを摘出、重量を測定した。その結果、図2に示すように、100mg/kg投与群で強い腫瘍増殖阻止率が認められた。
図2 やまびこしめじ(ブナシメジ)熱水抽出物の投与により腫瘍増殖が抑制されたマウス(左)と同抽出物を投与しなかった場合(対照群)に腫瘍が増殖したマウス(右)
②直接食べた場合の動物実験
やまびこしめじ5%を普通のエサ(CE-2)に混ぜたエサと、普通のエサ(CE-2)でマウスを飼育し始めてから6日後に、20-メチルコランスレン(発がん剤)を注射し、引き続き同条件で飼育し、76週にわたって両群の発がん状況を比較した。その結果、図3に示すように、普通のエサを食べていた(対照群)マウスは36匹中21匹が発がんしたが、きのこ添加飼料を食べていたマウスの発がんは3匹だけであり、発がん抑制効果のあることがわかった。
Sarcoma180(肉腫)をマウスに移植する前に、FEH-1を経口投与した移植拒否実験では、表2に示すように、20日間1,500mg/kg投与群で10匹中4匹また40日間1,000mg/kg投与群では10匹中5匹にがんが付かなかった。更に非常に転移し易いルイス肺がんを用いた同様の実験では、1,000mg/kg投与群で、10匹中5匹にがんが付かなかった。これらの結果から、エノキタケに発がん防止作用のあることが確認された。
図3 ブナシメジ(やまびこしめじ)の発がん抑制効果
マウスの足に、肺転移のモデルとして広く用いられているルイス肺がんを移植後、連続10あるいは17日間やまびこしめじ熱水抽出物を腹腔内に注射した。一方同がん移植後11日目にマウスの足を切断し、さらに10日たってから肺に転移しているがんの数を調べた。その結果、表3に示すように、30mg/kg投与群で、抑制率が46%と、明らかにがん転移抑制効果のあることが確認された。
表2
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表3
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食用きのこの抗腫瘍研究は、1969年、国立がんセンター研究所の池川哲郎博士らが食用きのこの水抽出物の制がん作用について報告したのが始まりである(表1)。以来、長野県主要きのこであるエノキタケ、ブナシメジ(やまびこしめじ)の抗腫瘍研究について、池川先生をはじめ国立がんセンター研究所、JA全農長野、JA長野県厚生連北信総合病院、宝酒造(株)、(社)長野県農村工業研究所などが取り組み、強い制ガン作用のあることを実証している。そのメカニズムはともに免疫機能を高めることによるもので、有効成分は、エノキタケは分子量3万以下のタンパク多糖体で、EA6と命名され、ブナシメジは分子量3万以上の多糖体で、構造解析からβ-(1→3)-D-グルカンであると推定されている。
(1)制がん作用
エノキタケ
Sarcoma180(肉腫)を移植前7日間および移植後14日間、マウスにエノキタケ熱水抽出物(FEH-1)を腹腔内注射した。その後、24日目にがんを摘出、重量を測定した結果、図1に示すように、10mg/kg投与群で、腫瘍阻止率が98.5%と最も高い数値であり、エノキタケに強い抗腫瘍効果のあることがわかった。
図1 FEH-1のマウス腹腔内投与による
Sarcoma180(肉腫)に対する抗腫瘍効果