表4
やまびこしめじ(ブナシメジ)投与マウス血漿の
抗酸化活性
血漿 | AOAAAPH (min) |
AOABHP (%) |
対 照a) | 12.6±2.9(12) | 46.4±15.9(10) |
きのこb) | 13.1±2.2(12) | 59.0± 7.8(12)* |
平均値±標準偏差(数)、*:P<0.05
a):
普通のエサ(CE-2)で26日間飼育したマウス血漿
b):
やまびこしめじ10%をCE-2に添加したエサで
26日間飼育したマウス血漿
(社)長野県農村工業研究所は県立静岡大学薬学部との共同研究(1999∼2003年)で、きのこ類のエタノール熱抽出物について、マウスを用いたオキサゾロン誘発Ⅳ型(遅延型)アレルギーに対する効果を検討した。その結果、表5に示すように、やまびこしめじは、二次感作前3日間の経口投与で、最も高い抗Ⅳ型アレルギー作用を示した。なお、Ⅳ型アレルギーは細胞免疫型で、抗体とは無関係にアレルゲン特異的に反応し活性化された細胞(リンパ球)によって引き起こされる反応で、症状が現れるまで数日を要するので遅延型とも呼ばれ、接触性皮膚炎(かぶれ)や膠原病などがこの型に属す。
表5
オキサゾロン誘発マウスⅣ型アレルギーに対する熱エタノール抽出物
の効果
試料 | 投与量 (mg/kg) |
動物数 | 耳介肥厚率 (%) |
抑制率 (%) |
コントロール | 5 | 100.0±3.7 | ||
二次感作前3日間経口投与 | ||||
やまびこしめじ | 250 | 5 | 13.8±2.5* | 89.2 |
エノキタケ | 250 | 5 | 29.3±8.7* | 70.7 |
ナメコ | 250 | 5 | 30.2±5.9* | 69.8 |
エリンギ | 250 | 5 | 22.3±2.2* | 77.7 |
耳介肥厚率:平均値±標準偏差、 *:P<0.01
最近急増している心筋梗塞や脳梗塞などの各種血栓症の発症が血液の流動性と関係があると言われている。(社)長野県農村工業研究所、長野県衛生公害研究所、長野女子短期大学、中野市農業協同組合等との共同研究(2001年~)できのこの血液流動性に及ぼす影響について検討を行ってきた。その一部を紹介する。
被験者の女子短大生33人を11人づつ、エノキタケ、やまびこしめじ(ブナシメジ)、ナメコの3グループに分け、グループごとに各きのこ1日1人50gを1週間毎日昼食時に食べてもらい、きのこ摂取前と摂取後の毛細血管の血流を、マイクロレオロジー測定装置(MC-FAN)を用いて測定し、比較した。
その結果、被験者全体のきのこ摂取前の平均血流が59.3秒であったのに対し、摂取後は45.7秒に短縮された。また、きのこ摂取前には60秒以上のいわゆる「ドロドロ血」の人は10人(30%)を占めていたが、きのこ摂取後には2人(6%)に減少した。
なお、きのこ種類別の血流改善率は、エノキタケ18.9%、やまびこしめじ21.5%、ナメコ30.0%で、ナメコが最も顕著であった。更に、エノキタケについて、日本一生産地のJA中野市管内の健常成人100名を被験者とし、1人1日100gを1週間毎日食べてもらい、同様の方法で、血流を測定し、比較した。
その結果、被験者全体のきのこ摂取前の平均血流が57.3秒であったのに対し、摂取後は49.5秒に短縮された。きのこで血流改善作用が確認されたのは初めてである。
なお、本実験の血流の観察例として、図10は血液の流れの悪い人(全血通過時間が60秒以上)のいわゆる「ドロドロ」状態を示したもので、図11は血液の流れの良い健常者の「サラサラ」状態を示したものである。
図10 きのこ摂取前の血液が「ドロドロ」状態
図11 きのこ摂取後の血液が「サラサラ」状態
抗酸化作用とは、がんや老化に伴って発生する動脈硬化、脳卒中、糖尿病などの生活習慣病の原因となる活性酸素(フリーラジカル)を除去する働きであり、きのこにも活性が認められている。
(社)長野県農村工業研究所は県立静岡大学薬学部との共同研究(1999∼2003年)で、やまびこしめじの抗酸化活性(AOA)について、熱水抽出物およびそれを摂取したマウスの血漿を用いて検討した。その結果、熱水抽出物自身のAOAは弱かったが、表4に示すように、やまびこしめじ摂取後のマウス血漿は、アルコキシルラジカルに対して有意な捕捉活性(AOABHP)の増加を示した。また、ペルオキシルラジカルに対しても捕捉活性(AOAAAPH)が増加する傾向を示した。なお、やまびこしめじ摂取による血漿中のAOAの増加は、高分子画分の誘導に起因することを示唆した。また、マウス血漿中の過酸化脂質量も、やまびこしめじ摂取により低下する傾向を示した。これらは、制がん作用との関連を考える上で興味ある結果である。